WiDS HIROSHIMA アイデアソン「SDGsとデータサイエンス」開催レポート

大学生・高校生が考える、課題解決のためのデータ活用アイデアを発表する「WiDS HIROSHIMAアイデアソン」が2023年2月12日に開催されました。今回は「SDGsとデータサイエンス」をテーマに日本全国からアイデアを募り、一次審査を突破したファイナリストによるプレゼンテーションが行われました。

WiDS HIROSHIMAについて

WiDS(ウィズ)は、米国スタンフォード大学を中心に2015年にはじまった、Women in Data Science の略称で、AI・データサイエンスの発展と本領域の人材育成・女性活躍を推進する世界的な活動です。
WiDS HIROSHIMAは、WiDSの地域イベントの一つとして、認定アンバサダーである株式会社Rejoui代表取締役の菅 由紀子氏が、広島県や広島大学といった主催者と連携し、2020年より開催しています。広島県から次世代のデータサイエンティストを輩出するために、ワークショップ・アイデアソン・シンポジウムなど様々なプログラムを実施し、誰もがデータサイエンスの楽しさを感じられる機会の創出を目指しています。

アイデアソン「SDGsとデータサイエンス」

今回のアイデアソンのテーマは「SDGsとデータサイエンス」でした。SDGsをテーマとした議論は学校教育においても広く行われており、学生にとっても馴染みのあるテーマといえます。世界において解決が急務と言われている環境汚染、差別、貧困といった課題に対しデータでどのように解決が図れるか、学生によるチャレンジが行われました。イベント当日は、事前の書類審査によってファイナリストとして選出された全8チーム(高校生6チーム、大学生2チーム)がプレゼンテーションを行いました。各チームの発表内容を発表順にレポートします。

目次

【 高校生の部 】 ファイナリストアイデア紹介

① 質の高い教育をアプリから!

広島県立広島叡智学園高等学校の「Edu-lab」チームは、相対的貧困による進学の影響をデータから読み解き、貧困が理由で大学進学が困難な高校生を対象とした学習・進学支援アプリを提案しました。アプリの機能としては、奨学金や大学入試日程などの情報提供に加え、利用者と支援者のマッチングによる質問対応等の仕組みを盛り込んでいます。

成績と家計収入、および大学進学希望率のデータを適切に読み解くことで国内の相対的貧困の存在を導いており、説得力のある内容でした。また、利用者が大学進学が困難な高校生であることを考慮し、広告等を用いてユーザーに金銭的負担をかけないアプリの運営方法を提案されていた点を評価するコメントも寄せられました。

② 外国人児童の増加に伴う日本の学校の対応

愛媛県立松山南高等学校の「みなみんず」チームは、外国人児童の増加によって、日本語支援がさらに重要になっていることをデータから解き明かしました。

さらに、学校内で取り組むことのできる日本語支援方法として、クラス内でそれぞれの国の文化を共有し合う機会や、ピクトグラムを用いたコミュニケーションを提案しました。

行政からの支援といったポイントではなく、学校内で取り組むことのできる施策に注目して提案を行っており、「意外な着眼点だった」というコメントが相次ぎました。

③ 空き家の活用について《 ええじゃん賞 》

三次高等学校の「チーム空き家減らし隊」チームは、高校がある三次市で空き家が増加していることに注目し、空き家の増加によって町にどのような影響があるか調査を行いました。さらに、空き家の活用方法として実際に市役所の方にインタビューを行い、現状の利用方法に関する課題や今後の打ち手についてまとめていました。

空き家の活用は数多くの市町村で課題となっており、実際に島根県の平田町にて空き家を改修し、所有者と購入者のマッチングを行っている「ひらた空き家再生舎」から、事例の共有や、企業誘致の方法についてのアドバイスも寄せられました。

④ 教員の部活の負担軽減について《 準優勝 》

松山南高校の「South」チームは中学校・高等学校の教員が部活動の指導によって十分な授業準備の時間を取ることが困難になっているという課題を取り上げました。

発表では部活動での指導をアプリ内で行う方法を提案しており、専門指導者と生徒をマッチングさせることによって教員の負担軽減と生徒の技術向上の両立を叶えるものになっています。

教員の方々の負担を身近に感じている生徒ならではの提案で、「発想が素晴らしい」「教員の方の大変さを再認識した」というコメントが寄せられました。

⑤ 廃校を有効活用した地域活性化 ~キャンプ場×釣り堀×道の駅としての活用を目指して~《 優勝/オーディエンス賞 》

宇和島東高校の「学校再生キャンパーズ」チームは、宇和島市の廃校の活用方法をデータを用いて調査しました。廃校が海に近いことを利用し、宇和島市民でも来たいと思える地域活性化を実現する方法としてキャンプ場や道の駅の建設を提案。さらに、実際の運用を想定し、土地のリース代金や人件費等の支出を計算した上で、1日にどれだけの施設利用者が必要か、損益分岐点を算出していました。損益分岐点や経済効果についても詳細な計算を行っていました。

発表内で多くのデータを用いて丁寧な説明をしていたことや、立地を活かした提案ができていたことから、審査員陣から「実現できそう、うまくいきそうだ」といったコメントが挙がりました。

⑥ オンライン図書サービス《 アンバサダー賞 》

広島叡智学園の「True Ocean」チームは、高校が位置する大崎上島町が離島であり、図書館が少ないという課題に着目。読書が人間の成長に与える影響を示した上で、様々な本に触れるために「オンライン図書館サービス」を作り、不要な本を活用した読書機会の創出を提案しました。

貸し出す本と借りたい本のマッチングにおけるAI活用のアイデアや、高齢者にとっても良いサービスで「他の場所でも展開できる可能性がある」などのコメントが寄せられました。

【 大学生の部 】 ファイナリストアイデア紹介

① 外国につながる児童生徒への日本語教室と体験活動、保護者への情報提供事業 ~すべての人に安心と居場所を~《 準優勝/ええじゃん賞 》

広島大学の「チーム結」は、東広島市の外国人児童の増加に注目し、日本語指導教室へのアクセスや情報提供が困難になっていることをデータによって示しました。さらに、実際に東広島市の外国人児童とその保護者を対象とした情報提供および日本語教室の開催を行い、ヒアリング結果等を用いて今後の事業の方向性を提案しています。

すでに実際に活動を行っているということから、さらに活動を広げていくためのアイデアとして、市役所などとの連携や翻訳技術を用いた新たな事業創出へのアドバイスが多く寄せられました。

② 老人性うつ症状を検知するシステムの提案《 優勝 》

最後の発表である新潟大学の「チーム木村家ブラザーズ」は、老人性うつ病を発症している方の集計人数と理論値に差があることに注目し、隠れうつの自動検知モデルを提案しました。検知モデルでは音声データを利用し、似たような方を見つけ出すことでそれぞれに合った治療法の推奨機能が期待できるというものでした。

深層学習を用いた分析技術が高度な提案であったことから、データの取り扱いやモデルの詳細について、具体的なコメントが多く寄せられました。


表彰

全チームの発表終了後、審査員陣の審査と視聴者投票が行われ、表彰者が決定しました。後日、受賞チームには表彰状と賞金/賞品が授与されました。

受賞チームの詳細はこちら でご紹介しています。

おわりに

本アイデアソンでは、SDGsとデータサイエンスをテーマとした様々なアイデアが生まれました。どのチームの発表も、生活の中で感じた疑問や「いまの状況を変えたい!」という想いからスタートしており、非常に熱意を感じるものでした。

データを用いた課題解決は、いまや社会で必要不可欠なスキルといえます。WiDS HIROSHIMA は、参加者が自ら社会課題に触れ、自身の手で情報を整理・分析し、問題解決のアイデアを提案する機会の提供を通じて、今後もデータサイエンス領域における人材育成を普及啓発してまいります。

WiDS HIROSHIMA イベントサイト https://wids.hiroshima.jp/

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