高校教員向け「機械学習・データサイエンス指導入門講座」開催レポート

2021年2月20日・21日、全国の高等学校教員へ向けた機械学習・データサイエンス指導入門講座を開催しました。
この講座は、総務省統計研究研修所より委託を受けて、株式会社Rejouiが教材・カリキュラムの開発、講座運営を行い、代表取締役の菅 由紀子が講師を務めました。
当日の様子をレポートします。

来たる令和4年度の「情報Ⅱ」必修化に伴い、高等学校教育ではデータサイエンス・機械学習の基礎学習が取り入れられます。この講座は、それらの教育を担う高校の先生方が担当科目の文理を問わずにこの領域の専門性を深め、指導計画の基礎を確立することを目的に開催されました。

1日(70分×5コマ)で構成された講座では、機械学習・データサイエンスの基礎座学に加えて、機械学習のアルゴリズムを学習者にとって身近な題材を用いて学べる教材を使ったプログラミング演習を行い、この領域の網羅的な理解に加えて、体験学習を通じて指導のためのポイントをレクチャーしました。

新型コロナウイルス感染拡大防止を鑑みて講座はオンライン開催となり、2日間で350名超の先生方にご参加いただきました。当初、各日100名の抽選参加を予定していましたが、おかげさまで全国各地から多数のお申込みをいただき、早々に満席となってしまいました。
かねてよりAdaptive Learning(*1)の研究をしている当社では、規模が大きくなるほどにそれぞれの学習レベルに寄り添った指導が難しくなるという集合学習の壁を懸念していました。しかし、日に日に増していく応募者の方々、中には参加への熱意を添えてくださる方もいらっしゃり、これに何とか応えたい!という主催・運営の想いから大幅に増枠しての開催となりました。

(*1) Adaptive Learningアダプティブラーニング。学習者の習熟度や興味・関心に応じてレベルや内容を個別に最適化する学習方法のこと。

機械学習・データサイエンスの基礎学習+Google colaboratoryを用いたプログラミング演習

今回の講座は大きく分けて5つのカリキュラムで構成されています。
すべての項目において、基礎座学に加えて例題つきの演習を行い、受講者自らの手で機械学習を体験することを重視した内容となっています。

基礎座学では、「データサイエンス」「機械学習」の基本理解のための言葉の定義や用語説明に加え、私たちの生活の身近なところで活用されているこれらの技術の事例について解説を行いました。医療現場、交通、物流など私たちの生活に関係する多くの業種で、すでにAIをはじめとする機械学習の技術が活用されています。
受講した先生方の中には、農業を専門に学ぶ学科の先生や部活動でスポーツを指導される先生もいらっしゃり、そうした分野での活用にも関心を持っていただきました。

また演習では、Googleが提供する無料のプログラミング実行サービス“Google Colaboratory”を用いて演習を行いました。
ここでは、機械学習に欠かせないプログラミング言語であるPythonを受講者の手元で実行し、データ集計や画像や映像の物体検知などがどのように行われるかを実践してもらいました。

[ 演習内容 ]
・基本統計量算出
・物体検出
・回帰分析(演習例題つき)
・SVM(演習例題つき)
・クラスター分析(演習例題つき)

事前にアンケートを実施したところ、参加者の中には今回の講座ではじめて機械学習について学ぶ人も多数いらっしゃいましたが、「機械学習の役割と重要性を理解し、プロセスに従って実行できるようになる」「それぞれの手法と実践例を理解する」など、各章ごとにゴールを設け、チャットで理解度をたびたび確認しながら進めました。
質問や不具合は、講師のほかに3名の運営が常時対応し、進行に遅れてしまった受講者が取り残されないよう行ったフォローアップが大変好評でした。

教材・事前設定ガイドブックの配布

講座では、受講生にあらかじめ事前の環境設定マニュアルや、当日使用する教材をデータで送付しました。先生方の中には、印刷したものを手元に置いて受講された方や、事前に予習として概要を把握された方もいらっしゃいました。

事前設定ガイドブックの配布

テキストは、機械学習・AI・データサイエンスなどについての概念や基礎的な知識を学ぶ章と、より具体的な分析手法について学ぶ章とに分かれています。

需要予測やSVMなど、説明が複雑なものについては具体的に想像しやすくなるよう、「両親が営む市内のケーキ屋さんでアルバイトする主人公の学生 美緒さん」を取り巻く日常からシーンを切り取り、ストーリー仕立てで作成しました。

受講後アンケート(一部抜粋)

受講後、参加者へアンケートをお願いしたところ221名の方々からご協力いただきました。回答者のうち、9割近くの皆さまにおおむねご満足いただけたようで、スタッフ一同、胸を撫でおろしました。

参加者の声

さいごに、講座内のチャットまたは受講後アンケートの中でいただいた皆様からのお声をいくつかご紹介します。

課題・気づきなど
「理論的な内容は数学科で、その活用を情報科で担うことが大切ですね」

「今回のように研修環境やサンプルコード、データの共有コピー使用手順書があるとうれしいですね。」

「課題を発見し、課題をどうデータを結び付けていくのかが課題だと考えていましたが、そのうえでどう分析するのか、という部分を少し知れた気がします。」

感想・ご意見など
「専門家の方ならではの話がとても参考になりました。」

「双方向で丁寧にやり取りしていただき、この先も勉強してみようと思いました!」

「後ろの運営の方々のサポートが凄かったです。」

「万全のサポート体制のもとプロに導いていただいた事にただただ感謝です。」

「本当にあっという間の7時間でした。」

「楽しかったです。生徒もこんな風に楽しく学べたら・・と思います。」

「Pythonを初めて体験させていただきました。便利ですね。もう少し勉強していこうという気持ちになりました。」

「PCに疎いので、情報量の多さに頭が爆発しそうでしたが、こんなにいろいろなことができるんだと世界が広がったように思いました。」

このほかにも、前向きなコメントや講座をより良くしていくためのご意見などを多数いただき、大変励まされました。
二日間を通して、 日ごろから情報数学を担当している先生方をはじめ、パソコンに苦手意識を持っている先生方まで、日本の高校教育に携わる先生方が等しくこの国の教育の未来のために、情熱を持って取り組んでおられる姿が非常に印象的でした。
今回受講してくださった先生方を通じて、機械学習・データサイエンスの領域が未来を担う子どもたちへと受け継がれていくこと、今回の二日間がその一助となれば幸いです。

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