小説で学べる伝える力 “結果を言葉で伝える”気合い
本日はデータサイエンティストに必要な、とある力を学べる小説をご紹介します。それがこちらです!
どれだけ読んでも0kcal!
『どら焼きの丸かじり』 (http://u0u1.net/ZohI)
著:東海林さだお 文春文庫 2013年
言わずと知れた東海林さだおさんの食エッセイ、「丸かじりシリーズ」の30作目(!)である『どら焼きの丸かじり』。シリーズの累計発行部数が200万部を突破するなど、わざわざ私が説明せずとも、このシリーズのすばらしさは折り紙つきです。
ですが私はこの本を、特にデータサイエンティスト、もしくはこれからデータサイエンティストを目指す方にぜひ読んで頂きたい!と思い、本記事のテーマに選びました。私自身もデータサイエンティストを目指して学んでいる身として、この本を通じてとても多くの学びを得ました。
なぜ、食エッセイをデータサイエンティストにおすすめしたいのか?それには、次のような理由があります。
データサイエンティストとは(あえてざっくりと定義してしまいますが)、データから社会やビジネスに有用な知見を生み出す人を指します。その仕事によって得られたさまざまな情報は、人間が物事を判断する際のサポートになったり、新たな仕組みを作ったり、問題の原因を探り当てたりすることに使われます。
そして、それらの過程においてとても重要な技術が「結果を言葉で伝える力」です。
…さて、どういうことでしょうか?
私はデータサイエンス学部に所属していることもあり、授業や外部コンペティションなどで、データ解析に関するプレゼンテーションを行なう機会が多くあります。
その際に直面するのが、分析結果や研究課程は良いものになったけど、専門知識や研究の文脈を知らない人にその発表内容を理解してもらうことが難しい、という状況です。
データサイエンスには「現実社会に向き合う」というとても大きな役割があります。一方で、データ解析を行なうプロセスでは専門知識を必要とすることが多く、得られた結果を一般化して伝えるには、専門知識量以上に求められることが多いのです。
どんなに優れた研究も、伝わらなければ意味を持ちません。特に社会における問題解決の場面では、問題に向き合う当事者全員が共通認識を持つ必要があります。そしてそれがあってこそ、その先の問題を解決できます。
ですので、データサイエンス領域の研究者にとって、結果を“ガチ”で伝える力はとても重要なものなのです。
そんな、データサイエンティストにとって大切な「結果を言葉で伝える力」を創り上げるのは、「意図に沿った言葉をバチっとはめる語彙力」「嫌みのない(受け入れられやすい)表現」「ガチで伝えるぞという熱量」だと私は考えます。
そしてそれらを学ぶことができるのが、東海林さだおさんの食エッセイなのです!
そのすごさを一部抜粋でご紹介します。以下は「どら焼き」に関するエッセイです。(自分なら「どら焼き」をどう説明するか考えながら読んでみると、この本の魅力をより理解していただけるかと思います。)
—- 抜粋 —-
‘’しっとりと茶色い、あのビロードのようなふくらみ。
どら焼きの丸かじり 著:東海林さだお 文春文庫
しっとり湿っているのにツヤがあってテリがある不思議。
・・・
あの大きさも好き。・・
あの立派なお体格。頼もしいんですよね、あの大柄、重量感が。
・・・
のんびりして穏やかな感じがするでしょ。人柄がいいっていうのかな、けっして悪い人じゃない。
・・・
割ってみましょう。両手の親指をどら焼きの中央のところに並べて左右にゆっくりと割っていきましょう。ゆっくりとですよ。すると、ホラ、割れていくじゃないですかムリムリと。
・・・
その割れ目に注目してください。断層というのかな、そこんとこをよく見てください。カステラに霜柱が立っている。・・・’’
驚くべきことに、東海林先生はまだどら焼きを食べていません。食べるまでのどら焼きの解説、描写に3ページ使っています。(ちなみに食べてからも3ページ!)
どら焼きを語るその気迫は、この世で右に出るものはいないのではないでしょうか?そしていかがでしょう。意識をしたことはありませんが、言われてみればどら焼きを割る音はたしかに「ムリムリ」だったような気がしてきませんか?
リアル感をガチで伝えようとする姿勢、オリジナルの表現を使いながらも、読み手にも納得感を与える力!これはまさに、私たちデータサイエンティストにも必要な力ではないでしょうか。
他にも魅力的な点はいくつかありますが、今回は割愛します。趣味で読み始めた食エッセイではありますが、このような視点で読むと「伝える力」はもっと研ぎ澄まされるかもしれません。
最後に、東海林さだおさんのいちファンとしてお伝えしたいのは、この本は読んでいてすごく楽しいのです。まったくつらくない。毎文おいしいのに0kcal!ページをめくる手が止まらない!もう文章の食いしん坊!ということです。
是非、皆さんも内なる食いしん坊を呼び起こし、修行に励みましょう!
(この記事を書いた人)
ワイワイ 20歳
某大学データサイエンス学部に在籍中
趣味はバスケ。字をきれいにしたい。