本日は、データサイエンス的な考え方を楽しく学べる小説をご紹介します。
それがこちらです!
まったく新しい知的警察小説
『 エウレカの確率 経済学捜査官 伏見真守 』 (http://u0u1.net/ZohI)
著:石川智健 講談社文庫 2016
舞台は女性ばかりを狙う連続殺人事件の捜査本部。次の凶行がいつ起こるともわからない中、解決の糸口すら掴めない日々に終止符を打つため、二人の新戦力が投入されます。
一人は心理分析によって捜査を進めるプロファイラー、そしてもう一人が経済学者の伏見守。
プロファイラーはまだ理解ができるけど、なぜ経済学者が?と思われる方が多いかもしれません。彼は経済学の中でも“行動経済学”という観点から捜査を進めます。事件というのは必ず犯人が何らかの利益を得ている。それは金銭であったり、鬱屈した感情の発散であったりと様々ですが、とにかく犯行のリスクを上回る利益を得た奴が犯人だ、という理論でもって計算を行い、犯人を探し出すのです。
確かに新しいですよね!
ただ、なぜこの本でデータサイエンス的な考えが学べると言えるのか?
そもそも人は推理小説を読む際、ある人が犯人である、という仮説を立て、それを検証していくというデータサイエンスのサイクルステップを知らず知らずのうちに踏んでいます。この過程をデータやモデルを用いて行なうと、それはもうデータサイエンスの入り口に立ったと言っても過言ではないと私は思います。
ここで、データサイエンスのサイクルと推理小説を読む際のサイクルの対応を見てみましょう。
上の図は、データサイエンスにおける仮説検証のステップをまとめたPPDACサイクルというものです。これを推理小説に当てはめると、事件が起こる(P)→いかに犯人を絞るか考える(P)→事情聴取や証拠品の収集(D)→犯人の推測(A)→犯人の特定(C) という風になります。ぴったりとはまりますね。
そしてこの小説では、所々に表と数式で埋まっているページが存在するなど、実際にデータを用いて明快にその過程が描かれています。この本に登場する伏見先生は、捜査員でありデータサイエンティストともいえると思います。
本書では、そんな経済学捜査官と女性刑事がペアを組み事件に挑みます。
二人は真相にたどり着くことができるのか?
ちなみにその伏見先生はイケメンで、ストーリーの中では随所においしそうなお菓子タイムも挟まれていて、これだけでも読む気が起こる方もいるかもしれませんね(笑)。
さて、本題に戻ります。
本書では、数学や行動経済学用語がたびたび登場するのですが、数学や経済学に疎い方も安心して読めるように、しっかり解説されているのがこの本の素晴らしいところです。話中では、数学が得意でない相方の刑事さんにもしっかり納得がいくように伏見先生が説明してくれます。
ここで、伏見先生の素敵なセリフをご紹介。
「常に自分の考えを疑え。常に自分の行動を振り返れ。」
これは、バイアス(物事の偏った見方)による真相の見誤りを回避する方法の第一歩になる、と彼は作中に何度も繰り返します。そしてこれは自分の苦手意識にすら当てはまる、とのこと。
もしかしたら、人々が抱いている苦手意識というのは自分自身の行動や周囲の発言などにより形成されたバイアスによるものなのかもしれません。非常にニュートラルな立場から自分を眺めると、「あら?そんなことないじゃない」といったこともままあります。やってみたら意外となんとかなった、という経験は皆さんもお持ちなのではないでしょうか。
あら、そう考えるとなんだか元気が出るような。気持ちが楽になるような、、そんな気がしてきませんか?
こういった考え方を、「データサイエンス的ポジティブシンキング」とでも呼んでみましょう(笑)。これは、新しい技術等を覚える際にとても大事な姿勢だと考えます。
2020年は、コロナウイルス感染拡大により生活に大きな影響があり、うまくいかないことに落ち込んだり、悩みが絶えない人も多いでしょう。そんな時は、ぜひこの小説を読んで、そういったネガティブな感情は有意ではないことを証明してみてはいかがでしょうか?
(この記事を書いた人)
ワイワイ 20歳
某大学データサイエンス学部に在籍中
趣味はバスケ。字をきれいにしたい。