対談

CROSS TALK

人事データ×AI活用で、日本の幸せ量をダイレクトに増やす

「働き方改革」が声高に唱えられる昨今、注目されるのは人事領域で取得されたデータをいかに組織づくりに活かすかということ。組織改善プラットフォーム「wevox」を提供するアトラエのデータサイエンティスト杉山聡様と、人事データに特化したデータ分析・コンサルティングを行なっているRejouiの代表取締役 菅由紀子にて、人事領域のデータ活用の未来について語りました。

対談者プロフィール

PROFILE

  • 株式会社アトラエ データサイエンティスト 杉山 聡

    東京大学大学院にて博士(数理科学)を取得の後、株式会社アトラエに入社。同社の1人目のデータサイエンティストとして、組織改善プラットフォーム wevox のデータ分析機能開発を手がける。また、ワーク・エンゲイジメントの第一人者である慶應義塾大学の島津教授と、仕事と余暇の関係についての研究を遂行中。

  • 株式会社Rejoui 代表取締役 菅 由紀子

    2004年株式会社サイバーエージェント入社。株式会社インタースコープとの協業でネットリサーチ事業の立ち上げ、広告の販売や企画などに携わる。2006年3月に株式会社ALBERTに転じ、データ分析業務を担当。大手総合通販サイト、デジタルコンテンツ配信企業の顧客行動分析、CRM構築コンサルティング、DMP構築アドバイザリー等 多数のプロジェクトを担当。
    2016年9月に株式会社Rejoui を設立。関西学院大学大学院専任講師。データサイエンティスト協会スキル委員、アナリティクスアソシエーション プログラム委員。

     

組織改善を行なう上で重要なのは、「デジタルとアナログの良いとこどり」

アトラエさんでは、人事データをスコアリングして組織の課題発見・改善に役立てるサービス「wevox※」を提供されていますが、今後より働きやすい環境を実現するために大切なことはどんなことだとお考えですか?
※wevox:従業員へのアンケートをもとに組織の状態を可視化し、課題特定と改善策の実施を通して組織改善のサイクルを生み出すサービス。アンケート項目や分析機能はワーク・エンゲイジメントの権威である慶應義塾大学の島津教授とともに開発。
リリース後2年で、生産性向上、離職率低減、管理職育成を目的に、750社超への導入実績あり。

杉山大切なのは、デジタルとアナログのいい所を融合することだと考えています。HRのデータを見ているだけで自動的に組織が改善される訳ではありません。ただ、データ分析から得られた結果からさまざまな仮説を持つ事は大切です。実際、「wevox」で算出されるスコアも、それを眺めるだけでチーム改善の方策がみるみる浮かび上がってくるような、魔法のアイテムではありません。そのスコアをもとにチームに関わる全員が様々な角度から議論することで、本当の課題が見えてきます。

シェアすることによって、チームが話し合うきっかけが生まれるのはとても大きいですね。話し合いの中で「なぜこのスコアになるのか」が解明され、新たな課題や良いアイディアが生まれることに繋がりますね。

杉山最近だと、僕と学生インターンとの間でディスカッションを行なったときのエピソードがあります。学生と僕の関係では、どうしても上司・部下というような上下の関係性が強くなりがちです。そういう状態でストレートに「最近困ってることある?」と聞いても、素直な意見ってなかなか引き出せないんです。でも、データに基づくスコアをみながら「納得感ある?」みたいな聞き方をすると、これまで聞けなかった本人の事情や率直な意見がもらえたため、実りあるディスカッションができました。結果、その場にて課題特定とそれに対する施策までが出揃い、スコア改善につながったことがあります。

学生もいる環境だと、マネジメントの課題も特殊ですよね。Rejouiにも大学生のインターンが所属していますが、社会人と異なり仕事をした経験も少ないので、仕事をどの範囲まで任せるか、どのようなフォローをするかということにはかなり気を遣っています。これは新卒への対処とも似ていますね。
一言で「組織」と言っても働く人それぞれで事情が異なるので、パフォーマンスをあげるために一人ひとりに合った環境を整えてあげることはマネジメントの大きな仕事です。この点で役立つのが、人事データの分析ですね。

杉山そうですね。もう、活かしどころしかないです(笑)。従来の組織では、マネジメントに指名された人が自力でメンバーの状態を把握することが多かったと思います。仕事を楽しんでいるのか、不満を持っているかなどを日常のコミュニケーションで情報収集していました。組織に蓄積されたデータがあれば、相手の状態をスコアリングによって可視化することができます。データによって大まかな状況を把握できるので、それをもって直接対話した際に表情や声の調子から、相手の異変に気づくことも可能です。

「組織課題の解決は誰の仕事か?」
データを通じて、
宙に浮いていたボールの所在が見える

杉山組織課題の解決を目指す際、よくクライアントから声があがるのは「課題の解決は誰がやる仕事なのか?」というもの。解決すべき課題があるということは皆漠然と思っている一方で、その責任の所在が明確でない企業が多くあります。データを使って課題が明確化されることで、誰が解決すべきかのボールの所在がはっきりすることも、組織改善の第一歩として大切です。

組織課題そのものを取り扱う責任者がいるのではなく、課題によって解決すべき人が異なるので、具体化することで「自分が解決しなくてはいけない」とメンバーが自分ごと化できるのも利点のひとつですね。
たとえば、同じチームに健康に課題を抱えるメンバーがいた場合、「原因は何だろう?」「定時で帰れるようになれば解決する?」といった議論のように共通認識の課題に対して解決策をみんなで話し合っている状態も、良い組織につながる活動のひとつです。

杉山まさにその通りですね。データでは、「健康に課題がある」というところまでは把握できるのですが、原因は現場で議論しなければわかりません。睡眠不足によるものなのか、それは家での夜更かしなのか。労働時間が長いとしたら、1人の仕事量が多いのか、効率の問題なのかなど。
データ分析が与えてくれたきっかけをもとに現場で議論して、見えてきた課題ごとにしかるべき人が行動を起こす。これが、データと人間のいい協働の形だと思います。