「2024年度 米メジャーリーグ ロボット審判導入か」

「2024年度 米メジャーリーグ ロボット審判導入か」

近年、米メジャーリーグ(MLB)の観客動員数の減少が問題視されています。チケットの価格高騰や、負け越しているチームの観客動員数減少など、様々な原因が挙げられていますが、その中でも今回は「試合時間の長さ」に注目し、これを解決する方法として提案されている「ロボット審判」について説明します。

「ロボット審判導入は、MLBの未来を変革しうるのか」

米メジャーリーグ(MLB)の試合時間は平均3時間以上で、最後まで観戦するにはかなりの体力が必要です。そのため、試合時間を減らすための取り組みとして「ロボット審判の導入」が議論されています。

MLBコミッショナーのRob Manfred氏は先日、2024年のシーズンからロボット審判を導入したいと語りました。

ロボット審判は、正式な名称を「Automated Ball-Strike System」(ABS:自動ボールストライク判定システム)といいます。この技術は極めて新しいものというわけではなく、すでに数年前から米マイナーリーグの試合で導入されており、ストライクかボールか判定する作業を、人間の審判よりも迅速かつ正確にAIが判定できます。

また、バッターとキャッチャーの背後に大きなロボットを設置する必要はなく、人間の審判は通常の配置のままで、自動システムの判定を伝える装置を耳に装着するだけで利用できる見込みです。

アメリカのスポーツ専門チャンネルESPNによると、他の審判機能としては、「リプレイによるストライクとボールの見直しシステムで、各マネージャーが試合ごとに数回のチャレンジ権を有するもの」が考えられるといいます。

Manfred氏はESPNに対し、いずれにせよ、ロボット審判の導入は人間の審判のパフォーマンスへの批判として捉えられるべきではなく、試合のスピードアップに役立つものになると語りました。調査では、今シーズンの審判はビデオリプレイを見返すのに平均で1分37秒を費やしており、MLBのデータでは、ロボット技術を利用したことで、マイナーリーグの平均試合時間が9分間短縮されたといいます。

画像出典:https://thedigestweb.com/baseball/detail/id=55744

9分間の試合時間短縮がどのような効果に繋がるかは、実際に検証しなければわかりません。また、ロボット審判の導入によって野球の面白さに変化が生じる可能性があるのかは、導入前に議論する必要があると思います。

「人間か、AIか」

例えば、際どいコースをストライクと判定してもらうための技術「フレーミング」は、捕手のスキルとして評価されていましたが、判定が正確なロボット審判の導入によって、その価値を失うことになります。

また、人間の審判は、今まで様々なドラマを生み出してきました。ストライクコールのジャッジによる試合の盛り上がりは、人間が判定するからこそ発生する魅力的なものでした。審判をAIが行えば、そのような場面はほとんど見られなくなるため、野球に人間味がなくなると指摘する人もいます。

一方で、たった一度の誤審で、審判の名前を晒したり、誹謗中傷するファンが多くいたことも事実です。また、一球の誤審により打者の考えるストライクゾーンが狂う可能性もあるため、選手生命にも関わるジャッジが正確になるのは、とても大事なことです。

技術的にはAIが審判を行うことは可能になっています。人間よりも正確な判断ができるAIが人間の仕事を代わりに行うという例は、一般社会でも数多く存在します。あらゆる物事がデジタル化される現代においては、本当にAIが代替したほうがいいのか、人間が行うことに大きなメリットがあるのではないか、吟味を重ね、選択することで、私たちが生きる社会に適切な形でAIを導入するヒントが得られるかもしれません。

参考記事
https://www.espn.com/mlb/story/_/id/34130915/hate-baseball-wants-save-it

この記事を書いた人

名前:師子鹿 孔(シシカ コウ)
所属:立正大学データサイエンス学部データサイエンス学科2年生(2022年4月)

高校まで12年間野球を経験。高校時代、映画「マネーボール」に出会いセーバーメトリクスに興味を持つ。データの重要性、面白さを実感し、大学ではデータサイエンスを専攻。2021年9月よりデータ分析企業でのインターンシップを開始。

趣味は、一人旅。

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