2022年3月4日、新型コロナウイルスの影響が続く中、WiDS HIROSHIMAシンポジウムはオンラインによる配信形式で開催された。当日のイベントの様子をレポートする。
WiDS HIROSHIMAについて
WiDS(ウィズ)は、Women in Data Scienceを略した用語。ジェンダーに関係なくデータサイエンティストとして活躍できる人材の育成を目的とした、米国スタンフォード大学発の世界的な活動である。
WiDS HIROSHIMAは、WiDSの認定アンバサダーである株式会社Rejoui代表取締役の菅 由紀子氏が、広島県や広島大学といった主催者らと連携して、2018年より継続開催しているWiDSの地域イベントである。広島県から次世代のデータサイエンティストを輩出するために、多様なプログラム(ワークショップ・アイデアソン・シンポジウムなど)を実施し、初心者から経験者まで誰もがデータサイエンスの楽しさを感じられる機会を創出している。
女性がデータサイエンススキルを楽しく身につける環境の創り方が話題に
本シンポジウムでは、産官学で活躍している女性データサイエンティストがスピーカーとして集まり、最先端のデータ活用事例の紹介およびパネルディスカッションを行った。
今回は、「これからのデータ活用と人材育成」をめぐって、スピーカーが現場で実感した課題をもとに、活発な意見を交わした。
データサイエンス分野における女性活躍の壁
日本のデータサイエンス分野では、人材の9割が男性であり、ジェンダーギャップがとりわけ大きいというのが現状だ。。近年、女性比率が上昇してきたが、それでも成長スピードはゆるやかだ。なぜ女性の活躍が阻まれるのか、本イベントのディスカッションでは3つの可能性が議論された。
①データサイエンスへの苦手意識
「算数が苦手だ」「数学が嫌いだ」という思いを持つ女性は無意識に壁を作り、データサイエンスに興味を持つこと自体が難しいのではないか。
②「データサイエンティストは男性の仕事だ」という雰囲気
教育現場でも学習が広がり始めたプログラミングやシステム開発などの分野は、まだまだ男性向けの仕事というイメージが拭えない。また、教育現場では、データサイエンティストよりもデザインやメディアといったクリエイティブな分野の方が女性に向いているという雰囲気も未だに残っているようだ。
③働く女性をサポートできる体制、環境が整っていない
働く女性は、家庭と仕事のバランスや部署での立ち位置など、さまざまな制約を受け、データサイエンスを勉強するモチベーションが湧きにくい環境にあるのではないか。
女性が輝くデジタル社会の実現へ
このように、様々な問題提起がされた上で、パネリストらは産官学それぞれの視点から、問題を改善するため議論を交わした。
①文理一体の実現、データを扱えることが自然な雰囲気の創造
文系理系と境界線を引かず、誰でもデータ分析やプログラミングができる意識を教育課程で育てる必要がある。文理一体となり教育していくことが、次世代の女性データサイエンティストの育成促進につながるのではないか。
②ジェンダーに関わらず、働きながら勉強できる環境の提供
たとえば企業が勉強会を行うことで、社員がデータサイエンスについて認識を深めたり、データの活用方法を学ぶ機会を提供できる。ジェンダーに関わらず、国内のビジネスパーソンがデータサイエンスに触れる機会を創出する事が重要である。
③柔軟な環境づくり、学習を促進する制度設計
仕事と家庭の両立を叶えやすい仕組みやルールを取り入れている企業は、少なからず、時代とともに増えはじめている。そうした成功事例から多くを学び、柔軟に変化できる仕組みづくりが大切だ。また、企業がDS資格を取得した人にインセンティブを与えるなど、人々のスキルの取得を促進する制度設計によって、データ利活用の拡大も加速するのではないか。
終わりに
データサイエンスの世界では、ジェンダーやバックグラウンドに囚われない多様性が不可欠だ。どうしても理系の、男性の、と思われがちだが、よりよい分析結果を得るためには、性別の垣根を超えて広い視点から物事を見る必要があるし、分析結果を適切に伝えるためには国語力、いわゆる文系の力が大いに役立つ。
WiDSをはじめ、データサイエンスの普及を目指すこうした活動が、あらゆる障壁をなくし、多くの女性がデータサイエンス分野で活躍する世界が実現されていくのが楽しみだ。
この記事を書いた人
Jennifer 22歳
某大学の日本語学科に在籍中。留学をきっかけにRejouiでのインターンシップを始めた。
趣味は日本のドラマを見ること。